2023のメモ・中編
前編の続き
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・5月
「バイラルメディアの対義語はバイナルメディアが良いと思う。ハイラルメディアはシーカーストーン。」
おそらくティアキンに勤んでた時期のメモ。
「GotG Vol.3実はピーターとラクーンが二人とも地球出身と分かるのが良かった。地球出身なのに地球から拉致された2人が親友なんですよ…」
一般的な感想であんま言及されてなかったのが気になったけど合ってるよね?
「「底(floor)」とはデザイン用語で、カードの性能のうち最も弱い部分を指す。」
応用が効きそうな専門用語を見つけるとテンション上がります
「読書地図という概念が好きかもしれない。そうしたら積読もGoogle Mapのピン刺しみたいなもので、シチュエーションとかタイミングが合致した時に思い出して読むみたいな。だから積読を読まないものとして捨てる・売る行為は自分の可能性を捨てる行為なんですよね。積読は可能性が残っていることの幸福。」
Googleマップでピン挿しておいてたまたま近くに行く用事があったとき、ついでにピン挿ししたところにも寄るみたいなの、格ゲーでコンボが決まった感じの快感があります。
「キャラクター色のないアルファベットをタイトルに据える」
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の作者の人がインタビューで言ってたことなんですけど、キャラクター色があるかないかの見極めってメチャ大事だなと無意識に思ってたことが言語化されてたのでメモしました。敢えてキャラクター色のある一般名詞を据えて、怪しさとか胡散臭さ、リアリティを醸すって手段もある。
「オタクが好きな作品って以前はマニアックなものがそう呼称されていたけれど、最近は分かりやすく展開が読みやすいストーリー(安定感が保証されてる)がそう呼称されてる」
オタクが蔑称でなくなると同時に、不遇な扱いをされていた元のオタクはオタクの範疇から追い出され、いまも不遇の扱いを受けている。新規参入者によって寒い時期を支えたファンは居心地悪くなる。でも、その気持ちを吐露することは許されない。なぜなら新規参入者の方がマイノリティなので。みたなクラスタのあれ、あと何回味わえば良いのでしょうか。株じゃないので先駆者が救われることなんて本当にない。
「We don't wanna be left behind. All we wanna do is just blow your mind.」
ヒップホップでそこそこ耳にするフレーズ。『Koji1200 - Blow Ya Mind』の冒頭のあれ
元ネタは『Crash Crew - High Power Rap』 ちなみにこの楽曲のトラックはスチャダラやGrandmaster Flashがサンプリングしてるでもお馴染み『Freedom - Get Up And Dance』 80年代のみんなで同じ楽曲をサンプリングする感じ、いまの感覚だと逆に新しいように思います。
「日常生活にバグ人間が潜んでいる設定。バグっぽい動きをしてる人間を見つけたらスマホを翳すとバグかどうか分かる。I'm on Observation Dutyみたいな?」
陰謀論の始まりみたいなメモ。いつから陰謀論が危険なものになったのか。トランプ政権下、というか出馬の時点からすでにそんな雰囲気だったような。2023年、スカイゲームに並ぶヒットを起こした『第8出口』は『I'm on Observation Duty』から着想を得たらしいです。
「『野猿 - Be cool!』には反出生主義の歌詞がある』
例えば俺たち生まれなければ生きてる意味など迷わなかった、って歌詞を秋元康が書いてるの何か嫌ですね。80年代不良思想が10年代後半には文学のテーマになってると捉えるとかなり面白いかも。層ごとの問題意識が変わったのか、それとも層ごと入れ替わったのか。
「昼〇〇食ったから違うのに論」
線引きの問題。「カレー食ったからカレーは嫌かな」はわかるけど「麺類食ったから〜」は麺類てって思っちゃう。でもそれだと昼・スパイスカレーで夜・欧風カレーもありにされそう。ならないか。
「民族の移住先において最後まで消えずに残る文化は食文化」
意外と民族の蹂躙や漂白は帝国が思うほど簡単じゃないし、人間はしぶとい。
・6月
「ドラマ以外のエンタメ媒体、負け試合できない問題」
単館系の映画とかジャンルとしてそれが前提のホラーは例外として、基本は負け試合が出来ないが故の作劇が多すぎる。ドラマも最終話では勝つわけだし。ロッキー1作目はあんなに良い塩梅なのに、結局2作目はアポロに勝ってると考えると、民衆の勝ちに対する欲望はかなり強いのかも。でも、だからこそロッキー3のラストが最高なんだよな。でも4も最高だしさ。
「自分の知り合いが多重人格障害で、しかもコミュニケーションを取ってた人格が主人格じゃない、って言われた。たとえ本人にとって主人格じゃなかったとして、周りの人間にとっては唯一無二の人なのに…。」
主とか副とか誰が決めるのか。障害とか病気とかバグとかマジョリティとか正論とか。そんなことをもやもやしてる間に、半年経ってて、まだ声の掛け方がわからない。もう知らない人になってるかもしれないと思うと怖くて。
「何を問われているか分からないけど確実に何かが謎というミステリーの形」
何かが変だけど何が変なのか。探偵は事件が起きてから解決に向かうけどそれは本当は遅すぎる。本当なら何かが変と気づいた段階で未然に防げたのではないか。ハウでもフーでもワイでもなく、ワットを問われるのは我々の生活そのもののような気もするけど、誰もが探偵になれずにいるのではないか。
「ドルビーシネマ 後ろ目の席が正解」
後ろ目の席取らないとスクリーンが高すぎて、真ん中の方でもかなり見上げる形になるんですよね。音響設備の関係でそうなってるのかな。チケット画面って見下ろし図で、スクリーンの高低感がわかりにくいのかなり罠が潜んでるんですよね。
「&はetの合字」
ラテン語の接続詞のetらしいです。ここまで読んだ人用の豆知識。
・7月
「桜木町の動く歩道はアナウンスの電波がBluetoothイヤホンに混線してくる」
こういう現地でしか体験できないストリートの生の情報を知れた時かなり嬉しい。この方法でホラー映画の宣伝とかやったら効果的だと思うんだけど、効果的すぎて問題になりそうだな。
「19世紀ロシア思想家フョードロフの「重力の克服=死の克服」という思想が後世の思想や物語に強い影響を与えている」
『ジブリの教科書13』でハウルについて本田晃子が言及したところが面白くてメモしたやつ。ジブリからはラピュタやハウルについて連想されるけど、ヤマトとかガンダムもそう。ピクサーならカール爺さんとかまさに。これを読んですぐ発売された『革命と住宅』も当然のように面白い。
「ディズニーシーにインスマスの影を見る」
昔クトゥルフ神話を読みたての頃、ディズニーシーで『Lovecraft bonded werehouse』という建物を見つけて、ディズニーとクトゥルフの関係性ってあるのか?ってところから家帰ってネットで調べたらザクザク出てきた思い出。ディズニープラスでディズニーパークのドキュメントを見ていたら、ディズニーシーは開発当時からイマジニア(ディズニーで働くクリエイターをこう呼称する)が好き勝手やらせてもらえたパークらしく、細部までこだわられた美しさって、高バジェット×クリエイターの熱量でしか再現できないのだなと感じました。
「ファミレスでご飯食べてたら、隣の外国人グループがグルテンフリーかどうかを気にしてて、これ映画で観たやつ…と思った」
ベネッセよりハリウッドで予習したことの方がどうでも良い細部まで頭に残りますね。
「新しい表現って、手法だけ思いついた場合、その表現以外の箇所が全てその表現に隷属する形になってしまいがちなんだけど、どうにもこうにも作品が行き詰まった時に全てを一発で解決するアイデアとして、新しい手法が生まれた時に、真の意味で画期的な表現になる感じがある。これはその新しい表現が作品全体に隷属する形になっていて、前者の歪な関係よりも正しい関係性に落ち着けているからだと思う。」
これ割とそんなことないかもって思い出していて、例えばソニーが新しいハードを発売するとそのハードで出来ることを詰めたサンプルゲームみたいなのを同梱してて、えてしてそれ以上に可能な表現を使い切ったソフトは発売されなかったりする。IMAXとか4DXのデモムービーも同じ。結局はクリエイターが手法を隷属させうるテーマを見つけられるか否かの戦いでしかないのだと思う。おそらく、手法先行だとテーマを見つけられなくても日の目を浴びやすい、という生存バイアス。
「異界から帰還する少年、異界に第二の人生を求める老人m異界で余生を過ごそうとしたら無理矢理現世に引き戻された老人 それぞれ、君たちはどう生きるか、新ジュマンジ2、インディー・ジョーンズ5、のこと」
映画の原体験がインディー・ジョーンズ3部作だからこそいうんですけど、普通に新作最悪だったので、ディズニーのIP管理の下手さにはかなり憤ってます。
「渋谷のスクランブル交差点にある みずほ銀行はピン札の出るATMがある」
ここまで読んでくれた人に持ち帰って欲しい豆知識
「ヨコオタロウ「『既存の機能をある体裁でまとめることに価値を生み出す」」
さっきの手法と表現の話にも通ずるけど、新しい手法なんてそうはなくて、大概のクリエイトってこの言葉に尽きるな、と思った。
「エスニック料理を日本風にアレンジをする料理版魔改造の夜とか考えたけど文化的にあんま良くないのかな」
上で書いた食文化が最後まで残るって話とも通ずるようだし、フュージョン料理としてDNAを残していくと考えれば、良い企画なようにも思う。食版魔改造の夜、というアイデアは使い道ありそう。
「伝説のフィッシャーマンってトイレットペッパーマンと同じリズムですよね、って言ったらどっちも誰にも伝わらなかった」
梶木漁太のエースカードと中居正広のソロ曲を認知している人の重なるベン図、真ん中自分だけなのか
・8月
「賞レースの決勝行ったり、大きな出来事があったりするたびに個人名を進化させる芸人いても良いな」
イナダで苗字と見せかけて、ワラサ→ブリになる出世魚芸人。ブリにするタイミング難しいか。
「ポケモンスリープ、自己の健康状態を手持ちポケモンに反映させてるって聞いたんだけど、ポケモンという偶像に反射させてプレイヤーに内省させるの箱庭療法っぽい」
プレイヤーのメンタルケアをテーマにしたゲームってもっとあってもいいな。眠り、という行動が身体と精神のちょうど間にあって、身体性をテーマにしたゲームは多いけど、メンタリティに踏み込むゲームってあるのかな。
「キメラアント編のシナリオ、SIRENなのかもしれない」
群像劇の中で思いも寄らない人の思いも寄らない行動が規定されたはずの大きな物語の瓦解につながるところ。(凍らせたタオル=ウェルフィンの「…コムギ?」)
「23区の面積小さい場所を選べば区一周ウォークは意外とできる」
比較的大きな区にばかり馴染みがあったから意外な発見があった。皇居ランも10周とかしたら千代田区1周分ぐらいになりそう。大田区・港区・江東区あたりは区の外周をどこまでとするかでかなり変わりそう。レインボーブリッジって港区の持ち物なんですよね。お台場は面積的にほとんど江東区の持ち物なのに。
「( ※パラノマサイトのネタバレ含む)
メタネタでよくある、最後になって「じつはプレイヤーとして物語に介入していた」と明かすようなものではなく、「プレイヤーはゲームの外から介入していると思わせておいて、じつはあなたは過去の陰陽師の霊という登場人物のひとりをロールプレイしていました」というところが大仕掛けです。」
プレイヤーの視点とキャラクターの視点をピッタリ一致させることで、それが引き剥がれた瞬間身震いする感じ、叙述トリックとして新しいなと思った。『愚者のエンドロール』は後天的にこの構造を思いつくって話なんだよな。それを学祭の映画という発想につなげて青春ミステリに着地してるの何周した上でもやっぱりやばいね。
「同音逆義語シリーズ 好天・荒天 市立・私立 給気口・吸気口 配水管・排水管」
遍在・偏在とか浮動票・不動票とかも。「好天・荒天」が一番純度高そうで好み。
密猟・密漁とかも逆義ってわけじゃないけど好み。
「民藝 デザインにおいて「人とモノと環境の良い関係」を探り具体化する」
世の中の工芸品は、伝統工芸・民藝・美術工芸・産業工芸に分類できる。でもその境はかなりファジー。実際、民藝品と呼ばれるものも美術館で傷つかないよう、美術館で保存されているわけで。
「京都の六曜社珈琲、美人がタバコ吸ってる姿が見られるので良い」
(パターン化されたエモ)^2
「文字データの抜き取りをスクショくらいの手間で出来たら幸せになれる」
なんかこれ毎回2個くらいソフトとかアプリ通過させてようやくできません?ワンボタンかワンショートカットでやって欲しいくらいには多様するから。
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前編よりは思いのほか短くなってよかった。たいていの中編がそんなもんですよね。そうなると、この後待ち受ける後編が、最終章part1, 最終章part2みたいにしなきゃいけない。次で終わりと身構えさせて題名がファイナルじゃなくて、最終章だったときのなんなんだ感腹立つよね。そう考えるとあぶない刑事はすごい。「フォーエバー」のあとに「さらば」があるし。今度2024年に新作やるし。プロレスラーとラッパーと宮崎駿とあぶない刑事は引退宣言を間に受けちゃいけない。