猛者日記

大学生のブログです

春はあけぼのか?

もう季節は春に差し掛かる頃だ。春になると高校の頃を思い出す。

受験勉強をしているとき、古典がとても苦手だった。点数が低い理解ができないとかではなく納得のいかないことが多かった。

例えば、清少納言枕草子

春はあけぼの。… 

夏は夜。…

秋は夕暮れ。…

冬はつとめて。…

 冒頭の文。四季折々の風景の中で最も趣のある時間帯、光景が描かれる、冒頭の四節。

1000年以上も前に書かれたとは思えないほど、現代にも通じる普遍的な情緒を掬い上げた素晴らしい文だと思う。

 

ただ唯一納得できなかったのが「春はあけぼの」の部分。

だって春はお昼が一番気持ち良いから。一年を通してもこの時間が一番である。ポカポカしてそよ風が吹いている草原で昼寝。そんな至高の時間。

「あけぼの」は日の出の時間。春の日の出前なんてまだ冬。寒い。そんな時間帯に春のお昼が負けるわけがない。耐えることが風流だとでもいうのだろうか。

夏は夜だし、秋は夕暮れだし、冬はつとめて(日の出後の時間)。この感覚はとてもよく分かる。どれだってこの心がゆれる時間帯。それなのに「春はあけぼの」なんて、そんなわけがない。バカげてる。

というかこの素晴らしい感覚を持っている筆者が「春はあけぼの」などというだろうか?それに日の出を「あけぼの」っていう感覚、これも聴き馴染みがない。

これは仮説だけど、清少納言も背伸びして書いちゃったんじゃないかな。冒頭だし。カッコつけちゃったんじゃないかな。当時は紙も希少なものだったって言うし、一回書いて引くに引けなくなったから、強引に押し切っちゃったんじゃないかな。なんなら清少納言が清少 納言じゃなくて、清 少納言だっていうのもおかしい。清て。もう清は前川とか西川じゃん。清 少納言じゃキヨシ スクナゴンじゃん。水曜日のカンパネラ的なネーミングセンスですか?

 

お昼は古語で「昼つ方」だから、この文章を書き直すなら「春は昼つ方」になる。意外と悪くない。あとは春の昼の情景を思い浮かべれば良いだけ。ほら草原で日差しが気持ちよくて、ぽかぽかしていて、心地よい風が吹いて、なんだか目がかゆい…。鼻水も出てくる…。

そうだ…。そうだった…。昼間は花粉症が一番ひどくなる時間帯…。だから、清少納言はあけぼのを選んだのか。本当に申し訳ない。いまとなっては清少納言さんの先見性にただただ感服するばかり。反省しかない。春の昼があんなにも地獄だったことを忘れていたなんて。

 

 

こんなことを考えていたら、毎回いつの間にか古典の授業は終わってた。

国語教師に古典は外国語だと思った方がいいと言われたことがある。それくらい現代語とかけ離れているという意味らしい。しかし、英語と違い字面がダイレクトに脳へ伝わる分、自分はどうでもいいことに引っかかてしまう。言語が外国語ならば風土や風習も外国のそれなのだ。

 

古典で読み合わせの授業をしてるときにも似たようなことがあった。

そのとき読んでる人から逆算して、自分が読む箇所を予習していると文章の中に「万戸」という字があった。これを発音する…、考えた瞬間、背筋に変な汗が流れる。衆人環視の場でこんなこと言えるわけでない。正気の沙汰じゃない。ああ、神よ、何故、我を地獄におとした。

 

そうこうしている間に自分の番が近づく。マズい。

だが慌ててはいけない。そう俺にはアレがある。すぐさまスマホを取り出す。授業中のスマホなど百戦錬磨の俺には慣れたもの。

これだって所詮は遥か昔に作られた罠。まだ西暦が4桁になったばかりの頃である。こちとらその二倍、歴史の積み重ねがあるのだ。

こんな問題すぐにでも解決してみせる。

 

Google検索「万戸 読み方」

一番上にYahoo知恵袋で『万戸の読み方を教えてください。「戸」はこ?と?』というタイトル。

易い、易すぎる。神は乗り越えられる試練しか与えないのだ。わたしには少々簡単すぎたようだがな。

 

ベストアンサーに選ばれた解答

「こ」です。

 

万事休す。終わった。高校生活が終わった。

 

そして当初の見立て通り、教師に俺が指名される。

顔はいくら澄ました顔でも、頭の中は

vふぁいhvふぁsfvdkvっcsfkcだklcfrぐlhふぃrdgjくぉおvghsbfpfg

こんな。

 

声が震えてなかったとは言い切れない。自分だけが感じる緊張感の中、読み進める。読み進める。読み進める…。

とうとう視線が「万戸」を捉える。

腹痛でトイレに?それとも体調不良で保健室?もう泣いて土下座しようかと思った。

視界がぐにゃーってなって色がなくなった。白と黒だけの世界。幸か不幸か文字だけは見える。

これを読むしかないのだ

ま− 

そう言いかけた瞬間、教室は静寂に包まれる。0.2秒後、けたたましい音が鳴り響き、視界に色が戻る。

ゼロコンマ、色とりどりの世界。一瞬何が起こったのか分からなかったが、1秒後に全てを理解した。救われた。

授業が終わったのだ。永遠にも思える時が流れた。遥かなる時の彼方へ飛んだ気分。

 

後日、改めて読み方を調べたら「万戸」の読み方は「ばんこ」らしい

おい「ばんこ」じゃねーか、ふざけんな!

古典はいつも納得いかない。