Leah というアーティストを知っているだろうか。
僕はよく知らない。
何故ならLeah は全てが謎に包まれているからだ。
これだけ聞くと、正体不明で売り出そうとしてるグループやバンドが思い浮かぶだろう。
だがLeah はそんな二流とは一線を画す正体不明さを持っている。
なぜなら顔・国籍・年齢・活動状況、それに名前の読み方すら不明なのだ。
唯一分かっているのは、ソロのシンガーで、歌声から察するに女性である、ということのみ。
Leah にはホームページやTwitterのような公式の情報は一切存在しない。もっと言えば、Wikipediaのページもないし、当時のブログや掲示板をどう検索かけてもヒットしないのだ。
公式・非公式含めて一切の情報がない彼女は、このインターネット時代に置いて匿名性の極地に位置しているのだ。攻殻機動隊の笑い男を思い浮かべて貰えればイメージしやすいだろう。Leah は世間から認知すらされない、ゴーストなのだ。
だが初めにアーティストと言ったように、Leah にはたった2曲だけ作品が存在している。
この2つの音源は現状、Leah の情報の全てであると言える。
まず一曲目は、
2007年にスクエアエニックスから発売されたDS向けソフト『すばらしきこのせかい』の挿入歌。
この圧倒的な日本人英語の歌い方…!
これこそLeah の魅力。J-POPに無理やり英語詞を乗っけたようなメロディ。これを僕は「イングリッシュ演歌」と呼んでいる。
ゼロ年代後期特有の近未来を想起させるトラックと、聴き馴染んだメロディに乗っかる英語詞の親和性はバツグン。少年の心をこれでもかと抉ってくる。
この声で何度もWake up! と歌われて、覚醒せずいられる少年はいるのだろうか?
10年以上前のゲームの挿入歌でありながら、未だに評価の高い一曲。
Leah入門編として最適の一曲である。
そしてもう一曲が、
2009年に公開された『東のエデン 劇場版Ⅰ』のオープニング曲。
これを劇場版のオープニングで流す演出、100点。
calling がクラブミュージック的なアプローチのトラックだったのに対して、invisibleはポップかつ僕らの世界から数センチ浮いたような爽やかなメロディ。『東のエデン』という作品のテーマをしっかり汲み取っている。
ここから始まる物語に期待感と高揚感を抱かずにいられない。
初見の時、オープニング映像とも相まって、カッコ良すぎて気絶しそうになった。
Leah のイングリッシュ演歌も、calling と比較して極まっているのが分かる。
Aメロ・Bメロと、ある種詩吟のような節回しから、サビに突入してから一気に演歌のごとき歌い上げ…!!
天城越えにも匹敵する力強さ。
Leahの最後にして最高傑作と呼べる曲だ。
*
まず『すばらしきこのせかい』と『東のエデン』は作品としての完成度は素晴らしく、評価も人気もとても高い。未見の人はどちらも体験して欲しいと作品だ。
しかしこの二つを語る時に、Leah という名前が登場することはない。二つとも挿入歌という性質上、なかなかアーティスト自身の名前を目にすることが少ないからだろう。
もしかしたら両方を知っていながら、Leah という名前が繋がっていない人もいるかもしれない。
だがLeah が登場したとき、現在くらいSNSが普及していれば、また歴史は違っただろう。
だからこそ次の一曲をどうしても渇望してしまう。
2007年のcallingと2009年のinvisible
このたった2曲で、表現の幅広さと歌唱力の進化をLeah は見せつける。
いま新たに楽曲を発表した時、一体どんなことになっているのか楽しみで仕方ない。
いつかLeah が復活して、彼女がゴーストから伝説へと生まれ変わる日を待ちわびてしまう。